1円抜き(1ティック抜き)とは
今日は、私が初心者の時に実際に購入を検討した取引方法についてお話ししたいと思います。
先に結論をいいますと、この投資方法は検討しただけで実は一回も買っていません。
なぜかというと検討した段階でこれは無理だということが分かったからです。
この方法の名称は1円抜きといわれる投資方法で、株式投資を始める人たちが一度は検討するかもしれない取引方法なのですが、はっきり言って私としてはこれで儲かる事って極めて難しいんじゃないかなと思っています。
それではまず1円抜きの説明から始めたいと思います。
1円抜きというのは、その名のとおり購入価格より1円高いところで売却するという方法なのですが、正確にいうと株価によって呼値が違うため1円抜きではなく1ティック抜きといった方が正しいのかもしれません。
ただ、一般的には1円抜きの方がよく使われている名称のようなので今回は1ティック抜きではなく1円抜きという呼び名にしたいと思います。
なお、呼び値(ティック)は以下の表のようになります。
1株の価格 | TOPIX100銘柄 | その他銘柄 |
1,000円以下 | 0.1円 | 1円 |
1,000円超~3,000円以下 | 0.5円 | 1円 |
3,000円超~5,000円以下 | 1円 | 5円 |
5,000円超~10,000円以下 | 1円 | 10円 |
10,000円超~30,000円以下 | 5円 | 10円 |
以下続く | 以下続く | 以下続く |
例えば、その他銘柄の3000円以下であれば1円刻みで株を売り買いすることができるということですので、具体的には株価が上がっていく場合2998円の次が2999円、その次が3000円になり、その次の価格は呼値が5円刻みになり3005円になるということです。
なお、表に以下続くと書いているとおり、この後も続いていくのですが1株30000円以下の段階で1単元100株であれば購入価格が300万円になりますので、普通はこれぐらいまでわかっていれば十分だと思いますし、板を見れば呼び値はわかりますのでこの数値を覚えておく必要もないと思います。
私は基本的に1円が多いので・・・
さて、1円抜きが大きな力を発揮するのは株価が1000円・2000円・3000円もするような銘柄ではなく、もっと安い低位株といわれる株やボロ株といわれるようなさらに安い銘柄です。
例えば1株100円の銘柄で1円抜けたら1%の利益になりますし、50円の銘柄で1円抜けたら2%の利益になります。
つまり株価が小さければ小さいほど1円抜いた時の利益率は大きいものになります。
実際私が検討したのはここまで安い銘柄ではなく、例えば500円ぐらいの銘柄で1円抜くことは余裕なんじゃないかなと思ってこの取引を考えていました。
そもそも1日の取引結果を見ると「始値・終値・高値・安値」の四つが掲載されていることが多いのですが、前場寄り付き、つまり始値で購入してそれが高値ではない場合にはザラ場(寄り付きから引けの間)の途中で必ず1円以上値上がりしているわけです。
ちなみに、前場の寄付き(始値)で買うと取引に有利なのかについては株の売買で前場の寄り付き(始値)や後場の大引け(終値)は有利か?をご覧ください。
どの銘柄を見ても始値が高値であることはかなり少ないため、この取引方法はめちゃくちゃいい方法なんじゃないのと初心者だったので思ってしまいました。
そのように考えている投資家もけっこういるかもしれませんね。
1円抜きのデメリット
今思うとこの取引は絶対無理でしょうと思ってしまうのですが、まずこの1円抜き取引のデメリットとしては1回の失敗でそれまでの利益を吹き飛ばすほどの損失(大損)を被ってしまう可能性が極めて高いということです。
取引の成功率だけで考えると、この1円抜きという取引方法はかなり高い成功率だと思います。
ただし、成功率自体が仮に90%あったとしても、成功した時の利益はあくまでも1円です。
逆に損する場合を考えると安い銘柄で値動きが小さいとしてもいくら値下がりするというのはだれもわかりません。
仮に10回取引したとして90%の成功率だったとすると利益は9円ですので、残り1回の損失が9円以内でない限り必ず損をするという取引になります。
得られる利益は限定されているのに対して被る損失は限定されていないためトータルでいうと極めてマイナスになるリスクが高くなります。
またもう一つ注意しておかないといけないのは仮に始値が高値ではなかった場合でもその途中で大きく株価が値下がりして取引時間中ほとんどマイナスで推移して、最終的に終値で購入価格より1円高い金額で取引を終えるということもあるということです。
具体的には青線が価格の推移を表しているチャートを簡略化した下の図をご覧ください。
始値(100円)で購入して、この図のようにすぐに値下がりを開始し、ほぼ一日中購入価格を下回っている場合もあります。
得ようとしている利益は1円ですので、仮に95円の時点では利益5回分の含み損になっており、この価格になったときに損切りをしないで耐えられるのかということが問題です。
その時の精神的なストレスは相当大きいのだと思います。
この図でいえば結果的にさらに下落し安値90円に達し、その後上昇して終値で高値101円になり1円抜きに成功することになります。
まぁ~これは私がわかりやすいようにちょっと極端な図を作ったわけですが、実際の取引でもこのようなことはありますので、ありえないような図を作成したのではありません。
もしかすると青色破線で描いているようにさらに下落することもあり得るので、ザラ場はどのような動きをするのかまったくわかりません。
もう少し大きな価格の銘柄で1円抜きをしたとしても、マイナスが10円になり20円になり30円になる可能性もあるので、そもそも1円の利益のためにこのマイナス30円とかになる時間帯で損切りせずに耐えられるのか疑問です。
耐えれば結果的に株価が上昇し1円抜きが成功するかもしれませんし、さらなる下落になるかもしれません。
この1円抜きというのは1回の損失で今後この取引方法ではしたくないと思うほどの大損を被ることがあるということです。
1000円や2000円のように価格が上がれば上がるほど1円を抜くことは極めて容易ですが、このような銘柄になると1日数十円は簡単に値下がりしますので、まずこの価格帯で1円抜きで利益を出し続けるのは不可能だといえるのではないでしょうか。
では安い価格の銘柄はどうなのかというとこれも実際はあまり変わりません。
100円や50円の銘柄でも1日3円から5円ぐらい落ちることはありますので、仮に5円落ちたところで損切りしたとするとそれを取り返すのには5連勝するしかないわけです。
それでやっとトントン(厳密には手数料の関係で違いますが・・・)ですので、その後利益を出してはまた損失が出てということを繰り返していくことになる可能性がかなり高いです。
この取引の最大のデメリットはやはり利益が1円にしかならないということでしょう。
この1円で失敗した時の損失を補填しなければならないので相当な経験があってこの取引の能力が高い人でない限り普通に考えると利益が出るとはなかなか思えません
こちらの記事もどうぞ
こちらの記事もどうぞ
あなたの株取引にとって役に立つかもしれない投資方法や取引の知識を書いていますので、気になる方はこちらの投資方法からご覧ください。
手数料の問題
また、この取引の場合には100円や200円儲けていても意味がないため購入口数を増やして1日最低数千円ぐらいは狙っていくんだと思います。
そうなると購入株数が増えるため失敗した時のリスクも高くなりますし、何より手数料の問題もあるからです。
例えば100円の利益が出た翌日に100円の損失が出てプラスマイナスゼロとはならないわけです。
手数料は証券会社にもよりますが、金額が高くなればほぼ確実にかかってきますので、実際には購入価格の1円上で売却できたとしても株価や購入株数によっては手数料を考えるとマイナスになることや損失が出た時の補填を考え、現実的には1円抜きではなく2円以上の利益を出さないとプラスにすることはできない投資方法です。
もし、100円の株を1万株購入(100万円)し、1円抜きに成功すれば、1万円の儲けですので税金と手数料を差し引いても十分利益が残りますが、逆に10円値下がりしたら10万円の含み損(評価損)になりますので・・・怖いです。
お金持ちならけっこうプラスにできるのかなと思ったりすることもありますが・・・
このように購入する株数が大きくなれば手数料を払ったとしても1円抜きで利益が出るようになりますが、株価、株数と手数料のコースによっては1円では利益が出ないこともあるので注意が必要です。
私としては1万株も購入する勇気がないので、この取引はできませんが株数が多くて、もしうまくいき購入後すぐ1円値上がりすれば取引時間1分ぐらいで数万円を稼ぐことも可能です。
今日も明日も、明後日も1円抜きで儲かるかもしれませんが、1年間とおしたときに利益が出ているかと問われると自信をもって「はい!」とはいえない投資方法であると思っています。
そもそも売り買いに手数料がかかる関係上、買った瞬間からマイナスでスタートしますので、この取引方法は現実的に無理だなと私は思いましたので結局検討しただけで一度も取引することはありませんでした。
こちらの記事もどうぞ
では、ある程度投資経験が出てきた今現在どのように考えているかというと、やはり1回のマイナスが大きくなることもあるため利益が1円や数円しか取れないこの投資方法はやはり私には無理だと思っていますし、他人におすすめできる投資方法とも思っていません。
ただし広い世界ですのでもしかするとこの投資方法を非常に得意にしている投資家もいるのかもしれませんね。
さて、ここからは追記です。
ここまでの記事は1円抜きで一度も取引することなく書いたものです。
そのようなことから、実際に取引してみたらどうなるのかと思い、1円抜きをしてみることにしました。
すると、ちょっと予想外の結果になりました・・・
詳しい結果については1円抜きは楽に儲かるのか2018年に11銘柄で取引した結果を公開をご覧ください。
まぁ~頭から無理だと考えるのではなく、とりあえず「自分だったらできるだろうか」というのを考えて、検討したことがない方であれば一応検討してみるのも良いのではないでしょうか。
とりあえず多くの投資方法を知っていればそれが何かしらのヒントになって、新たな取引の手法を見出せることがあるかもしれませんので今日はそのような意味も込めてこの内容でお話ししました。
それでは本日のまとめです
本日のまとめ
- 1円抜き(1ティック抜き)は購入価格より1円上で売却する投資方法
- 株価によって呼値は異なる
- 1円抜きが力を発揮するのは低位株やボロ株
- 成功率は高いが1回の失敗でそれまでの利益を帳消しにする可能性がある
- 成功したときの利益は1円にしかならない
- ザラ場で下落しているときに耐えられるかが問題
- 手数料や損失の補填を考えると1円では足りない可能性がある
- この投資方法を得意にしている投資家もいるかもしれない